Tale series

~「物語」のシリーズ~

 

古来より、神話を始めとした多くの「物語」は、描き手にイマジネーションや創作意欲を与えてきました。多くの「物語」が生み出した多くの偉大な芸術作品たちのすべてに共通することは「物語」が先にあって「描く行為」があとにあるということです。

 

このことを踏まえた上で私は「物語」による「描く行為」ではなく、「物語」と「描く行為」を同一の地平に並べることができないだろうかと考えました。そうすることによってより両者の親和性を高められないか、ということを探ろうとしたのが本シリーズになります。

 

始めに着目したのは、「描く行為」がどう生み出されるかです。

形を描きだす際には、きっかけになる何かが必要です。

当然のことながら、どんな線も必ず点と点を結ぶことによって生まれます。純粋に「描く行為」を取り出そうとする際、この点自体に意図をもたせてはいけないと考えました。

そこで、まず墨を画面にランダムに落として無数の点を作りました。

 

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そしてそれらの点を眺め、まるで自分で星座を描くように、そこに見えた生き物やそこで連想される生き物をイメージします。次にその投影したい生き物のイメージを実際の点に重ね、必要となった点と点を線で結んでいくことにしました。

この時、生き物の輪郭線をなぞるように線を結ぶのではなく、生き物の全体像を想像するための骨格として線を結んでいきます。

この線にはあくまで形を想像するための機能として役割を担わせているので、文字通り絵全体の骨格的な役割になっています。

 

いざ描いてみると必ず気づくことは、いつでも「最初の点」があるということです。私は無意識のうちに最初の点を定めて描き始めます。それはまるですべての物事には始まりがあることのようで、その「始まりの点」は絵を描いている間中、私の意識の中心にあり続けます。

こうして、一つの点から生まれた生き物が私の想像力を掻き立て、「物語」が生まれます。この「物語」が次の生き物を生み出す点へと導いてくれるのです。

 

このシリーズを始めた頃は、すでにある昔話を元に制作していましたが、より「物語」と「描く行為」の親和性を高めるためには自分で「物語」を生み出していくことが必要になりました。

描き出される生き物は、「物語」によってそこに生まれてきた意味と役割が与えられます。

このようなやりとりを繰り返していくうちに画面には生き物が描き足され、「物語」が進んでいきます。線は結ばれ動き出して「物語」を紡ぎ出し、その「物語」は次の線を導き新たな絵が浮かび上がっていきます。そしてついにこの「物語」が完成した時に、絵が完成するのです。

 

偶然に委ねられた「描く行為」は「物語」を原動力にして形を生み出していきます。逆にいうと「物語」を生み出すために「描く行為」が必要だったとも言えます。

いわば、「物語」と「描く行為」は相互作用を起こしながら、一つの作品を生み出していきます。